本の感想:ケーキの切れない非行少年たち(宮口幸治)、考えられないということ
自分が理解できない行動をしている人を見ると、なぜそうするのか、何を考えたからそう動くのかと、考えてしまうのが癖です。
でも、この本を読んで、考えて行動ができない人がいるということをやっと理解できた気がします。
境界知能のことを知る
この本で「境界知能」という言葉を初めて知りました。
100が平均のIQで、70未満だと知的障害、70〜84が境界知能ということらしく、14%前後の人が相当するようです。
IQが100未満だと、今の社会ではかなり生きづらくなるらしいのですが、85未満というとかなり大変のようです。
子供の頃、クラスに勉強が苦手で、テストの点がとても悪い子がいましたが、これまでなぜ勉強ができないか考えたことがありませんでした。
(勉強があまり好きではなくて、苦手なだけだと思っていた。)
でもこの本によると、認知機能(見たり聞いたり想像したりする能力)が低く、写す、数える、見つけるなどの基礎的なことができないことが、勉強ができないことに繋がっているのだそうです。
漢字を覚えようにも、そもそもその漢字の形が認識できない。
計算をしようにも「数える」ことができない。
黒板に先生が書いたことをノートに写すことができない。
先生が言っていることがうまく聞き取れず、ついていけない。
・・・・・・
だとしたら、勉強以前の問題ですよね。
この本の最初の方のページに、ある少年に図形を写し取るテストをした時に、少年が書いた図が出ています。
ちょっと衝撃でした。
こんな風に歪んで見えているのかと。
著者が勤めていた少年院では、「あいつが俺を睨んだ」とかのトラブルが多かったらしいのですが、相手の表情も違う風に捉えたり、他の人の感情を想像できず「睨んでいる」という固定観念で見えているのかもしれません。
この文章を読んだ時に、この体験を思い出しました。
境界知能の方に支援が必要と書いてある本です
知能が高いから良い人間、低いから悪い人間ということではありません。
この本には、境界知能の人を支援する仕組みが必要で、支援によって社会にうまく適合できずに、外れていってしまう人を少しでも減らそうということが書いてあります。
この本で、こういった問題を抱えた方がいるということを知れたことがとても良かったと思いました。
もしかすると世の中には私のように知らない人がたくさんいるのかもしれないので、こういった本でまずは事実を知られることが大事かもしれないですね。